TORAFU ARCHITECTS

建築的思考から生まれる、固定観念に縛られないプロダクト

トラフ建築設計事務所 鈴野浩一

 自由に発想できるプロダクトだからこそ、逆に条件をしぼる。「狭い中でどれだけ広げられるか」という行為を、彼らは楽しんで行っているように見える。その中のひとつが、彼らがディレクターを務める『石巻工房』のプロダクトだ。狭い日本のテラスという「敷地」の中に「その枠を越えてスペースを作ることができないか」という問いを立て、テラスに取り付けて使う“スカイデッキ”が生まれた。どこでも成り立つものは、とかく凡庸になりがちだ。「ここでしか成り立たない」という建築の概念を、彼らは自身の作品にも投影している。
「形やテイストが違うだけでは、あとは選ぶ人の好みになってしまう。これだけたくさんモノに囲まれている中で、ニュアンスの違いのみを出してもつまらないと思うんです」
 彼らの代表作である“空気の器”も、唯一無二のプロダクトだ。空気を包み込むように、形を変えられる紙の器。最初に依頼主から緑という色が敷地として与えられ、そこに「買った人が自分で緑色を作れるように」という問いを自ら課した。結果、紙の表と裏に黄と青を施すことで、角度によって二色が混じり合い、緑が見られるという不思議な器が誕生したのである。
 回答ばかりに目が行きがちだが、彼らが立てる問いにこそ注目したい。固定観念に縛られない建築家だからこそ、作ることができるプロダクトの理由がそこにある。

photo (left) : Fuminari Yoshitsugu “スカイデッキ”

【profile】

とらふけんちくせっけいじむしょ

鈴野浩一と禿真哉により2004年に設立。建築の設計をはじめ、ショップのインテリアデザイン、展覧会の会場構成、プロダクトデザイン、空間インスタレーションやムービー制作への参加など多岐に渡り、建築的な思考をベースに取り組んでいる。主な作品に「テンプレート イン クラスカ」「NIKE1LOVE」「ブーリアン」「港北の住宅」「空気の器」など。「光の織機(Canon Milano Salone 2011)」は、会期中の最も優れた展示としてエリータデザインアワード最優秀賞に選ばれた。2011年「空気の器の本」、作品集 「TORAFU ARCHITECTS 2004-2011 トラフ建築設計事務所のアイデアとプロセス」 (ともに美術出版社)、2012年絵本「トラフの小さな都市計画」(平凡社)を刊行。

credit

Photograph : Takehiro Goto

Edit : Satoko Nakano

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