明治11年に北区赤羽で創業して以来、同じ土地、同じ湧き水で酒造業を営んできた酒蔵「小山酒造」。スッキリとした飲み口のお酒「丸眞正宗」を造り続け130年以上、今では東京23区内で唯一の酒蔵となった。そんな小山酒造の魅力について常務取締役である小山久理さんに伺った。
23区唯一の酒蔵
酒蔵というと新潟や長野など水のきれいな地方というイメージがあるかもしれないが、東京、それも23区内にも酒蔵があるのをご存知だろうか。130年以上に渡って東京で酒蔵を経営する「小山酒造」があるのは北区赤羽。「明治の頃、この辺りは埼玉県から東京に物資を運ぶ中継点となっていて、又宿場町として栄えていたそうです。今ではほとんど井戸は見られないですが、昔は湧き水が豊富なエリアで、埼玉県にある酒蔵の次男だった創業者の小山新七が手伝いでこの地を訪れた際にたまたまここの水を飲んだ。美味しいと思い、調べたところお酒造りに適した中硬水だったので、この場所で酒造業を始めたと聞いています」と小山さん。
都市化が進み、地価や人件費が上がった都内では製造業自体が減少しているという。それでも小山さんは、赤羽という場所にこだわって酒造業を営んでいきたいと話す。
「ここのお水がお酒の味の決め手になっていますし、地元の方が愛して下さっているからこそこの地で続けて来れたんです。ですのでここ以外の土地で酒造りをするという選択肢はないと思っています」
「東京らしいお酒」を造りたい
小山酒造の銘柄「丸眞正宗」の特徴について小山さんは次のように語る。「食中酒として召し上がっていただく事を目的としているので、スッキリとしたタイプのお酒となっています。料理と合わせた時に食事がより美味しくなるように考えて造っています」また、そうした特徴の中に東京のお酒らしさがあるのではと考えているという。
「東京って色々な物をミックスして、それを独自の文化のように発信する街だと思うんです。東京のスタイルって何かと考えた時に、主張し過ぎない感じが東京っぽさだったり、粋なのかなって。主張し過ぎず、スッとキレがある、丸真正宗のそんな感じが、東京のお酒のイメージとして定着していけば良いなと思っています」そんな東京スタイルのお酒造りを追求する小山さんに、これからの展望をうかがった。「東京育ちの人々に“地元のお酒”っていう認識を持ってもらえるようにアピールしていきたいですね。“東京のお酒”として認識していただいて、それをきっかけに東京の食文化にまで興味を持ってもらえるようになったら面白いんじゃないかなと思ってます」